1.筋膜とは何か
筋膜とは、筋肉を包む膜のことです。筋肉だけでなく、腱や骨、内臓もこの膜で包まれています。
鶏肉などを切る時に皮と肉の間に透明な膜があるのを見た事がないでしょうか?
これが筋膜です。
人間の場合ですと、全身タイツの様に身体全体を包み込み、支えていることから「第2の骨格」とも言われています。何の為に存在するかというと、2つの役割があります。
① 保護
身体の各部分を守る為に、膜で包み込んでいます。
② 滑走
身体を動かす時には、筋肉や神経、内臓など各組織が滑りながら動いていく必要がありますが、この時、摩擦が多いと効率が悪くなります。この筋膜がある事によって引っかかる事なく滑りを良くしていきます。
2.筋膜に異常があるとどうなるか?
筋膜はコラーゲンでできており、85%が水分で構成されています。 そのため、水分の不足や強いストレス、同じ姿勢での長時間作業や偏った動作、もともとの筋肉の硬さなどによって、特定の部位に負担がかかります。
そうなると筋膜に「こわばり」や「ねじれ」や「ゆがみ」、さらには筋膜同士が「癒着」してしまいます。
筋膜がねじれたり、柔軟性が乏しくなってしまうと、筋肉の緊張や痛みやしびれが生じて、筋肉が本来持っている力を充分に発揮できなくなります。そうなると姿勢不良や人の活動性を低下させてしまうのです。
3.なぜ筋膜の異常で、痛くなるのか
「筋膜に異常がある部位」と、「痛みが生じる部位」は、実は違います。
筋膜がねじれたり癒着するなどで異常が生じる(上図で青い部分)と、その部位の方に、他の筋膜が引っ張られます。(黄色い矢印)結果として、一番引っ張られる場所に負担がかかり、痛みは生じます。(上図で赤い部分)
つまり、痛みの部分(赤い部分)だけを治療するのではなく、根本的な原因(青い部分)となっている筋膜のねじれや歪み、癒着をほどいていく事が、効果的な治療となっています。
4.筋膜リリースとは
筋肉がスムーズに動くためには、筋膜同士の滑りの良さが必要です。筋膜を柔らかくし滑りを良くして、解きほぐす方法が「筋膜リリース」です。
つまり筋膜の萎縮・癒着を引き剥がしたり、引き離したり、振動させたりすることで、正常な状態に戻していき、筋肉の柔軟性を引き出したり関節の可動域を拡大させていく事で、動作中の痛みを改善させていきます。
筋膜を効果的に緩めていくには、身体の中に存在する一定の法則を利用していきます。これは個人差があり、それを検査や評価をする事で見極めていき、ひとそれぞれ独自の治療計画を立てていきます。
単純に異常のある筋膜の部分を揉んだり叩いたりするだけでは、改善していきません。
5.筋膜ローラーやボールの注意点
筋膜ローラーやリリースボールなど、これらの器具でも、ある程度の筋膜のねじれや硬さを改善させられますが、筋膜同士の癒着をはがす事はできません。
一番の注意点として、根本的な問題に治療できていないという事があります。
上記の 3.なぜ筋膜の異常で、痛くなるのか で説明したように、痛みの出ている場所のみを器具でこすっても、本来の原因である筋膜が硬くなった箇所や歪んでいる箇所を治療しないと、すぐに痛みが戻ってしまいます。
繰り返しになりますが、大切なのは痛みの本当の原因を突き止める事です。
6.筋膜リリースとストレッチとの違い
筋膜リリースと似ているものとしてストレッチがあります。筋肉をほぐすという意味では同じように感じますが、ストレッチでは「筋肉を伸ばす」という事に対して、筋膜リリースでは「筋肉を包む膜をほぐす」という違いがあります。
効果の違いとしては以下のものになります。
ストレッチの効果
柔軟性の向上、疲労回復、血行促進など
筋膜リリースの効果
動きやすくなる(可動域の改善)、関節の動きがスムーズになる(関節位置の改善)
筋膜リリースもストレッチも、身体の調整にとっては大切な要素になります。
治療者が実施する筋膜リリース、そしてあなたが実施する自己メンテナンスとしてのストレッチ、これら二人三脚の治療体制が相乗効果を生み、治療効果を抜群にします。