1.痛みが生じる原因
日常生活を脅かす痛み、これはどうして生じるのでしょうか?
そして、腰痛や肩こりなど痛みが出た場所では何が起きているのでしょうか?
ヘルニアや骨や内臓などが原因の場合を除けば、多くの場合は患部を取り巻く筋肉のつっぱりや炎症が原因となります。
では痛みを感じる場所をマッサージして筋肉をほぐし、湿布を貼れば痛みは完治するのでしょうか?
答えは「ノー」です。痛みに長年、悩まされた人にこそ次の事を知っていただきたいのです。
2.痛みのある場所に原因はない
腰痛や肩こりは「痛みを感じる部分ではなく、運動している別の場所に原因がある」事が非常に多いです。
どういう事かというと、例えば腰痛であれば腰ではなく、お尻や股関節周りの筋肉、あるいは背中や肩甲骨周辺に原因があります。
肩こりであれば肩関節ではなく、肩甲骨や胸の筋肉に原因がみられます。(もちろん、それ以外のケースもある為、最初にしっかりと問診と検査を行わせていただきます。)
こういった場所が凝り固まる事によって、運動率が低下し、本来の可動範囲を確保できなくなります。結果として腰や肩に必要以上の動きが求められ、動かしすぎる事によって筋肉が過度に伸ばされたり、緊張したりして、関節につまり感が生じ、この状態が長く続き、負荷が蓄積され、腰痛や肩こりが引き起こされます。
3.身体は連動している
例えば身体を前に曲げると腰に痛みが生じる場合を考えてみましょう。
まず痛みなく前かがみが出来る場合は身体の各部分が上手に連動が出来ています。下の図でみてみると、身体各部が2ずつ動くことで、全体で10となり円滑な前かがみ動作が遂行されています。
その状態と比較して、下の図ではお尻の筋肉が硬く、股関節の動きがほとんど生じていません。そうなると本来、腰の部分では2だけ動けばよかったのに、股関節が動かない分の負担がかかり、腰の部分では6の動きを強制されます。
そうすると腰痛が生じてしまいます。
この状態の方に腰痛があるからといって腰を揉んでも、その時は気持ち良くても根本的な解決になりません。動きの悪い腰以外の部分を治療する必要があるのです。
4.身体をひねると腰痛が生じる
先ほどは前かがみ動作で説明しましたが、例えば身体をひねる時も同様の事が言えます。
腰の部分に相当する腰椎は、骨の形状からひねる動きは制限されています。こちらは腰の骨の図です。いくつかの骨が積み木の様に重なっていますが、突起の部分で上の骨と下の骨が嚙み合わさっています。そうなるとどうなるかというと、この突起の部分でひっかかってしまい、ひねる動きやねじる動きが制限されてしまうのです。 なので本来、身体をひねる動きは胸の部分に相当する胸椎や肩甲骨、あるいは股関節の動きによって構成されています。それを示したのが下のグラフです。
注目していただきたいのが、回旋としめされた水色の部分です。首の骨(頸椎、C)や胸の骨(胸椎、T)の動く範囲に比べて、腰の骨(腰椎、L)の動く範囲が著しく少ないという点です。
それなのに、本来は生じるはずの股関節や首、胸の部分でひねる動きが筋肉の硬さで制限されてしまった場合、もともとそんなにひねる動きのない腰の部分での動きが強制されてしまい、結果として腰椎に多大な負担を生じさせ、結果として腰痛を引き起こしてしまいます。
この場合も、腰が痛いからといって腰を揉んだり、電気をかけたり、牽引をしても根本的な解決にはなりません。動きの悪くなってしまった腰以外の部分の動きを回復させていく必要があるのです。
5.動きを担当する関節と、安定を担当する関節
今までの説明をまとめていきます。
身体には、動きすぎてはいけない関節(安定させなくてはいけない関節)と動かなくてはいけない関節(動きを出さなくてはいけない関節)があります。それを示したのが下の図です。 これが面白い事に上から順番に交互の位置にあります。
腰痛や膝の痛み、首の痛みなど痛みが生じる部分はほとんど水色の丸で囲まれた安定性を司る関節に起きています。言い換えると、水色に囲まれた安定性の部分が動きすぎている事によって痛みが生じて、その原因としてオレンジ色に囲まれた可動性の部分が動かなさすぎている事に原因があります。
これが筋・骨格系の痛みの真実です。
腰椎は本来は安定を担当する部分なのですが、股関節や胸椎など本来可動性があるのに動かない部分の負担が腰椎にかかる事で腰痛が生じます。これは腰痛だけでなく、膝の痛みや首・肩こりも同様です。
大切なのは痛みのある部分だけを見るのではなく、この痛みが生じている本当の原因を問診・検査・評価で見つける事。
そしてそれこそが理学療法士として自分が長年、臨床現場で培ってきたスキルとなります。
腰が痛いからといってしっかりと検査・評価もせずに腰をマッサージする、電気をかける、牽引するといった事が一般的には実施されている事が多いのが実状ですが、当院ではそのようなその場しのぎの治療は行ないません。痛みの本当の原因を突き止め、根本的な解決を図っていきます。